
袖を通す
誰かの記憶を纏った学生服に 袖を通す
ジモティで2000円の学ランに 袖を通す
制服を欲しがる理由を訝しがられないよう、「コンセプト決めて友人と飲むっていうのをやっていまして、今回春ということで学生がテーマで・・・」と事細かにやりとりを経て 袖を通す
「コンセプト飲みいいですね!よかったらこれも」と言って親切にも譲って頂いたメイド服にはひとまず 袖を通さない
思えば「息子が進学することになって」でも充分通用する世代でもあることにハッとしながら 袖を通す
最後に着てからの年数を数えながら 袖を通す
原色使いのTシャツに 袖を通し
白いワイシャツに 袖を通し
パーカーにも 袖を通し
結果、無難な色味のTシャツを選んで学ランに 袖を通す
鏡に佇むのは38歳男性でも 細胞が活性化するのを感じながら 袖を通す
細々としたものを放り出し無責任で自由な 見知らぬ街の 旅人みたいに 袖を通す
そして、
翌朝には何食わぬ顔で日常に 袖を通す
コス呑み
定期開催しているコンセプト呑み、もといコスプレ呑み。
きっかけは去年の7月末。察しの言い方はその予想通りとでも言いましょうか、
盆・踊・り❤️
に向かうつもりだったアタシと友人数名はゲリラ雷雨によって予定変更を余儀なくされたのです。
向かう浅草は豪雨。青く冷えてく、どころか鉛色に冷えてく東京。
それでも一度火をつけたアタシたちの心は、大輪の花を咲かそうとばかりに駆け出していて、
せめて集まろうと降り立ったのは、オフィスと昭和の佇まいが今なお残るJR神田駅。
祭り感を求めて訪れた広島お好み焼きの店はゴリッゴリのカープ推しで、店内は赤一色に染まっていた。
浴衣の友人二人と、たまたま黒のセットアップでカップルコーデの装いなアタシと女の友人はどうみても相席を余儀なくされたメンツにしか見えない。
いまだにセ・パの違いもわからず、「カープは広島!」くらいの認識でしかないアタシ(あるいはアタシ達)ではあるものの、せっかくだからと入り口で用意されているユニフォームを纏ったところ
なんということでしょう
その一体感たるや。
同じものを纏い、同じ色に染まる。かわす言葉は変わらずとも、共有している空気をもっと濃密に感じるような何かを感じる。
仕事のこと、恋愛のこと、家族や健康、最近のこだわり。
歳を重ねて比率が削られる話題もあれば、新たに出てくる話題もあるものの、
でも結局は酒を飲み交わすことの繰り返しなんじゃないか。こないだと同じ話題、同じギャグ、同じツッコミしかしてないんじゃ・・・。
そこに突如新たな光となって浮かび上がったのが、これに端を発した
「いっそコンセプト揃えて集まる?」
だったのだ。
押し込めずに滲み出る
それからアタシ達は、第一回の土木関連に始まり、医療従事者、ファーマーと続け、先日学生をテーマに集ったばかり。
友人宅で毎度催されるそれは、食事メニューももちろんコンセプトの一つ。
購買部の焼きそばパンに習って、この日は焼きそばとパン。
あとはそれぞれが思い描く学生的な何か。ポッキーとかじゃがりこ、ルーズリーフにポストイット。目につくものをどう活かしていくべきかの視点はなかなかに新鮮。
そして毎回思うのが、テーマを同じに合わせてもそれぞれが表現するキャラクターには交わりがないということ。
制服という個性を没してしまいそうな衣服にだって、一人一人の色味みたいな個性が浮き彫りになる。
もしかしたらそれは大人になった今だからなのかもしれない。
共感する鮮明なカルチャーやしきたりはあっても、それぞれにそれぞれの学生時代があったことを目の当たりにして、年相応ないつもの会話から少しの間解き放たれる。
偶々出会い、今を共に生きるアタシ達。
その瞬間を楽しもうとするその時、
例え学生服を着ていなくても
青春と呼んでもいいんじゃないかしら。
その後
「制服は戦闘服!」
という言葉を胸に強気に街を闊歩するも、
本物の学生達が放つ輝きの前では恐縮せざるを得ず、
「本物だ!!」
と、裏道を歩いた。
(今の自分が持ってる武器を効果的に活用していきたいものです、ねっ!)

学ランに映えるキャラメルコーン(赤がトトメス)

リプトン片手にクレープ屋で買い食い

弾けもしないエレキも小道具にするなど。
次回コンセプト「80年代アメリカ」に決定です。
バイ茶〜
トトメス