わびさび茶飯事

LIFE
2025.06.24

【脚本】ラジオドラマ「50年後、私たちはどう生きるのか」

シュ)今週も始まりました、へそで茶を沸かす。
 この番組は、お茶の間の、、えーーー、なんだったかな、、
 MCシュンと、えーー、茶菓子、、いやー茶碗、、そうだ、茶壷の3人が
 なんやかんやと繰り広げる義理と人情のー生活情報番組。
 今週も変わり映えのしないこのメンバーでお届けします。
ト)(アドリブ)
 ⚪︎⚪︎です。
ジャ)(アドリブ)(練馬の〜?)
 ⚪︎⚪︎です。
シュ)以上、3名でお届けしまーす! 
マ)(無視して進める)(アドリブ)
 永遠の18歳、マッキーです!
シュ)今週はなんと3000回記念です!
一同)(盛り上がる)
シュ)それだけではないんです。
 えー今月は6月ということでプライド月間です。
ジャ)TOKYO PRIDE 2025 Spotify Podcast アンバサダーです!
マ)私もです!
ト)えーっと、、今何年だったかしら?
シュ)2075年だったかな?
ジャ)え、2075年?
マ)私たち何歳なの?
一同)(黙り込む)
ジャ)38歳?
シュ)んなわけあるか!ん〜……88歳や!
ト)この歳になってもアンバサダーを続けられているって光栄なことよね。
シュ)なんでよ。アンバサダーをできたのは2025年だけで、それ以降Spotifyの担当者とは音信不通になったのを忘れたの?
マ)何があったの?あ、そういえばジャスミンが、、
ジャ)え、私?
ト)そうよ、あの日ジャスミンがまさかあんなことをするとはね、、
シュ)まぁ、もういいでしょう。ここで言う話じゃない。
 ともすると、今週のテーマは、「わたしたちのGLOW」ということで語っていきたいと思います、、(フェードアウト)

シュ)お疲れさま〜
一同)お疲れ〜
ト)にしても飽きもせず毎週よくやってるよね〜
マ)収録って頭の体操にもいいんだよね
ジャ)シュンもポッドキャストプロデューサーとしてよくやってるよな
シュ)40年前にSDHというポッドキャストレーベルを立ち上げて、おかげさまで100番組を手がけてるからね
マ)SDHが出資してくれてこの「レインボーの里」ができたんだったよね

(オープニングっぽい音楽が始まり、ナレーションに重ねる)

ナ)そう、ここはセクシャルマイノリティの人が集う老人ホーム「レインボーの里」
 都内近郊の自然豊かな地域にこぢんまりと佇むこの施設では、とても高齢者とは思えない個性溢れる面々が和気藹々と暮らしている。では、そんなファンキーな彼らの日常をちょっと覗いてみよう。
 
職)はーい、みなさん!徹子の部屋始まりますよ〜
ト)お、もうそんな時間か
ジャ)今週のゲストは確か美輪明宏さんだったかな
マ)二人ともほんと変わらないよね〜

ト)そういえばシュンはどこ行ったかな
職)シュンさんは次の番組の収録でもう外出されましたよ
マ)この歳になっても相変わらず忙しい人だよね〜
ジャ)(アドリブ?)

職)そうだ、今日は新しい入所者の方が来られるんですよ!
ト)え、聞いてない!どんな人?
職)確か70代の男性で〜
ジャ)ひゃだ!新しい恋の予感!
マ)ジャスミン、3回離婚したのに懲りないよね……
ジャ)うるさいわね!別れさせるよ?
ト)で、いくつなわけ?
職)だから70代で元自衛官って聞いたような……
ジャ)うそ?シングルかしら!
マ)ジャスミンっていつも第一印象はいいんだけど、その後が問題よね。今回はどうなるんだか
ジャ)あんたぶっ飛ばすよ?
てか、うかうかしてられないわ、着替えてくる!

ト)なんかジャスミンってまだ現役っていうか、諦めてないのが素敵よね
マ)ほんと。恋する気持ちって一番の若さの秘訣かも
ト)恋バナってさ、この歳になってもすると思ってた?
マ)思わなかった!88歳の自分なんて想像もしてなかったよね
ト)ほんとそれ。私たちもう米寿よ
 でもいくつになっても誰がかっこいいとか誰が好きだとか、そんなことで盛り上がれるんだよね
マ)わかる、大人っていうかおじいさんのフリをしてるけど、私たちまだ気持ちはあの頃のままかも
 
ナ)トトメスとマッキーがそんな話をしているうちに、着替えを済ませたジャスミンが戻ってきた。 

マ)え、ジャスミン!なんなの、その格好?!
ジャ)(アドリブ)
ト)(アドリブ)
マ)美の基準は人それぞれだもんね、、
 
職)みなさーん!ご紹介します。本日から入所されるトウマさんです。
ト)なかなかいい男じゃない〜
マ)これは波乱の予感
ジャ)やだ!目が合った!てか、すんごいこっち見てくる
マ)そりゃその格好してたらね、、

ナ)こうしてレインボーの里に仲間入りしたトウマ。
 精悍なルックスと多くを語らない人柄に惹かれ色めき立つ面々をよそに、ジャスミンの猛アピールが続いた。
 そして、ある日ジャスミンがついに決意を固めたのだった。

ジャ)私、決めた!これを最後の恋にする!
ト)何も最後って決めなくても、、
ジャ)トウマさんは待ち続けた運命の人!アタシ告白してくる!
マ)当たって砕けろってことね!
ジャ)うるさい!行ってくる!
ト)健闘を祈るわ

(足音と扉を開けるSE)

ジャ)ト、トウマさん!ずっと、す、す、好き、、(アドリブ)

ナ)夕日がさす赤く染まった部屋に二つの影があった
 それは熱い口づけを交わすトウマと介護職員だったのだ
 言葉にするまでもなく、そこには二人の確かな愛が溢れていた

ジャ)そ、そんなのあんまりよ、、(アドリブ)
 
 か細い声でそんな言葉を残し、その場を後にするジャスミン
 気づくと、冬の身支度を終えたさびしそうな山々が広がる裏庭に出ていた。

(切ない系のピアノのBGM)
 
ト・マ・シュ)おかえり
ジャ)あんたたち、、
マ)きっとフラれるだろうと思ってさ、焚き火しながら待ってた
ジャ)……失礼じゃない?
シュ)ほら、焼きマシュマロ!
ト)あんたの持っていきようのない気持ちもここで焼いちゃいな
ジャ)う、、うぅ、、

シュ)ジャスミン、元気出して!
ト)でもさ、恋してる瞬間は楽しかったんじゃない?
ジャ)(後ろ向きな一言?)
マ)この歳になっても恋できるのって素敵だと思うな
 そういえばトトメスは恋してないの? 
ト)アタシ〜?恋はもういいかな〜、、
 なんていうか基本的に恋愛って一人の人としかできないじゃない?
 これだけ世の中に魅力的な人がいてたくさんの可能性があるのに、もったいないような気がして
ジャ)もったいない?
ト)アタシはさ、たった一人の大切な人より、こうして気のおけない仲間とくだらない話をしている時間が好きなの
 この歳になると、今まであったいろんな欲が落ち着いて、色恋より昔話をしたりとかいっしょにテレビを見たりとか
 たまにときめいたりとかね。そんなことが楽しいんだよね
マ)ふ〜ん、、私は2030年に同性婚ができるようになって、ぴっぴと晴れて結婚できたでしょ。
 家族になれたことが今でもうれしいし、長年連れ添ってきた安心感があるな。
 でもここでみんなとおしゃべりする時間も好き。もちろんポッドキャストの収録している時間も
シュ)まさかこんなに続くとはね〜。しかもみんなで住むことになるなんてね
ト)若いときはさ、こんなに会えなかったじゃない、みんな仕事もしてたし
 こうして毎日会えて、たくさんの思い出を共有できて、歳をとるのも悪くないなって
ジャ)そうね、パートナーがいなくても毎日楽しいかも
 私にはみんなもリスナーさんもいるじゃない。みんなのジャスミン、それが私の生きる道よ!
マ)よっジャスミン!
 
職)あ!またこんなところにいた!
 焚き火しちゃダメっていつも言ってますよね
ジャ)ごめんなさ〜い
職)かわいこぶってもダメ
ト)それはそうと、あんたも人生楽しまなきゃダメよ
職)なんですか?急に
ト)こうして私たちのお世話をしてくれてるのには感謝してるけど、自分のこと大切にしてる?
 恋してもしなくてもいい、友達を作っても作らなくてもいい
 でもね、今あなたがしていることが50年後に生きてくるのよ
マ)そうそう、私たちがポッドキャストを続けてきたみたいにね
シュ)まぁまだわからないかもしれないけど、自分を大切にしてほしいってのはほんとそうだよね 
ジャ)恋愛もご無沙汰なんじゃない?もうアタシ、あんたでもいいわ
職)いや、ぼくにも選ぶ権利ぐらいありますよ!
一同)(笑う)

ナ)いつしか私たちは歳をとることにマイナスなイメージを持っていないだろうか
 若さを失っているような気がするかもしれないけど、きっとそうじゃない
 歳をとるごとに大切な思い出が積み重なっていく
 目尻の皺が増えるにつれて人生史上最高の自分を更新していく
 できなくなったことに目を向けるんじゃなくて、できるようになったこと、自分の周りにあるものや大切な人、
 これからやりたいこと、そんなことに目を向けられたら、もっと彩りのある人生になると私たちは確信している

 これまで世間が定義してきた家族の形、幸せの形に私たちは当てはまらないかもしれない
 でも一人一人の幸せがここ、レインボーの里にはあふれている

 さて、明日はどんな一日が待っているだろう
 
 人生は茶番劇だ

書いた人
マッキー恋するファッショニスタ

ファッション好きでとにかくおしゃべり、都内在住、アラフォーゲイ。ゲイ茶の中では恋愛担当かつ癒し系枠。 ここだけの話、実はあの人気BL作家「藍内蒼馬」という噂。 ほかに「マッキーの\ちょっと聴いてよ〜/」というひとり番組も配信中。
https://lit.link/mackypodcast

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